肉と魚をミックスして味わいたいという短絡的な欲求から始まったその事業は、水面下で行なわれていた。隠密に数人の研究員が、海辺に近いある地下室でこの実験を始めた。
遺伝子操作の技術はすでに危険な領域に達していたこの時代、地上の獣と魚類を組み合わせた新種の両生類を開発していたのだ。
目的は一部の傲慢な人間の胃袋を満たすためである。そこで豚肉と魚の味わいを同時に満たすため、豚と魚の交配実験から始められた。そして試行錯誤の末、雄と雌が１匹ずつ完成した。
しかし実験内容が外部に漏れ、動物保護団体などからの激しい非難を浴びて、この実験は中止となる。
そして、この時作られた雄と雌は研究員が拘束されている間にその地下室から逃げ出し、海へ身を隠したと思われる。
数年後にこの生物の子孫が繁栄し、近海では珍魚として重宝されることになった。豚肉と魚を同時に味わえる、この生き物は時には鮪よりも高い値がついたこともある。しかし、乱獲によって生存数が激減し、現在では生態を見たものはいない。
この生き物がいた海の近くでは、浜辺の砂の中や、当時栄えていた土産屋の跡地から、当時販売されたと思われる奇妙なアクセサリーが時々出土するらしい。
